小さな花が咲いた

ベランダから見える小さな貝殻の陰に咲いていた

僕は毎日ベランダに出て暑いのを我慢しながらどれだけ長く花を眺めていられるか自分と勝負する

汗が這いずり回って拭うのが面倒になるころ諦めて部屋にもどって水を探しているときにがちゃーん山田太郎が僕の部屋にいた


山田は灯台から落ちて産まれた。

殺されたんだ。

山田は僕の前で一日も命乞いをしなかったから水をやらないことも同じだと思ってそうすることに決めたけど山田は水じゃなくて花がみたいでらしい

山田がベランダにでようとするので殴って止めた

机にあった鉛筆立で殴った動かない山田を引きずってベランダから遠ざける

山田は殺されたときなにも言わなかったけど僕が殴って動かなくしてもやぱりなにも言わなかった


水が見つからないからベランダに出て僕の花のためにいのる

産まれたばかりの山田は不安げに辺りを見渡してでも何も言わない木の根元や桜草になるようだ