世界は僕達二人だけになってしまった。
砂や石やちいさな植物や機械たちは残っていたけれど、僕にとって意志あるものは僕と彼の二人だけだった。
そのことを世界中に展開したセンサーが教えてくれる。僕らの命を証明するものも、このセンサーだけだった。画面に浮かぶ二つの赤い点が僕らの命だった。僕らが生きていたことを、僕らの足跡を、旧式の機械は小さなディスクに記録していった。
「いい天気だなぁ」
僕は時々漠然とそんなことをつぶやいた。たとえ空が濁っていても、酸性雨が降り注いでも、僕は毎日のようにそんなことをつぶやいた。
そうすることで自分の魂がふらふらと分解してしまわないよう繋ぎとめていたかった。
そうしないと僕は生きて行けなかった。
「いい天気だなぁ」とつぶやく。「そうだね」と彼が答える。
そうしてはじめて僕は存在していられたのだ。