少年はジーンズとスニーカーだけを身に着けて闇に沈むザ・廃墟の一部屋にいました。少年は自らの拳に廃墟の壁を打ち砕く力が宿っていると信じていたのでその一部始終をビデオ・カメラに収めるために日の落ちた廃墟でカメラの位置を調整していたのです。シャツとか、パンツとかは、その、成り行き上仕方なく脱ぐ羽目になってしまい、どこかその辺に転がっていました。少年はいよいよアングルを決めて第一撃の準備に掛かりました。カメラは一台しかなかったので、身体全体を映すものと、打ち砕かれる壁を映すものを、それぞれ別々に撮影して後で編集する予定でした。少年はスポットライトの電源を入れて録画ボタンに指を添えると、自分の姿を見てチヤホヤする人々を想像しました。ネットで配信する準備は出来ています。勇気凛々にボタンを押して、壁からテニスコートを縦に5個並べたぐらいの距離にあるスタート地点へ行きました。前方の壁から、コンクリートの冷たい感触が伝わって来ました。少年はものすごい速度で走り出し拳を構えて壁に叩きつけました。それは、もう、ほら、なんというか、すごい。すごい勢いで、走って、すごい勢いで、壁が、こう、ビシッ!割れました。拳からは、血液が、滴り落ちません。壁を砕いたのは、拳ではないのです。少年の、あの、そう、気合が。少年の気合が、壁に、衝撃を、ヒビを、入れたのです。少年は満足しました。「次は確実に打ち砕いてやる」そう思いました。そうする自信が確かにあったのです。壁の、形質が、魂が、弱点が、彼には見えていました。一発入れることによって見えたのです。あとは、別のところで壁を打ち砕き、編集でなんとかすればいいのです。少年はカメラのセッティングに向かいました。


彼女は当然のように、上着だけを身に着けてザ・廃墟のトイレの個室にいました。深夜の廃墟に忍び込んで、暗闇の中で用を足すのがリサのお気に入りだったのです。下半身を隠すものは、その、成り行き上仕方なく脱ぐ羽目になってしまい、どこかその辺に転がっているはずでした。リサが興奮しながら足の位置を決めかねていると、壁にヒビが入ったような音が聞こえました。それはどこだかわかりませんが、廃墟の中のどこかから聞こえたことは確かでした。耳を澄ますと何者かの足音が聞こえて、慌てて服を探しましたが、暗闇の中では簡単に見つかりませんでした。リサは諦めて事を再開しました。服を着るのは、用を足してからでも遅くはないはずだと思ったのです。数秒後、彼女は自分の考えが浅はかであったことを知りました。


少年の拳は、いや、気合は、大きな音を立てて、壁を、完全に、打ち砕きました。打ち砕かれた壁は一メートル四方の穴を開け、破片を前方へ飛ばしました。幸いにもそこは、リサのいたとなりの個室だったため、彼女は怪我一つ受けることなく無事に用を足すことができました。(なんと幸運なことでしょう!)さらに、その幸福をたたえるかのように彼女の姿はスポットライトの光によって見事にスポットライティングされました。


少年は、それを認めるや否や即座に踵を返し、後ろを向いたまま裸同然のリサに自分のジーンズを投げてよこしました。そうです、少年は童貞だったのです。少年はジーンズを投げて寄越してしまったせいで裸同然になりましたが、スニーカーが自分の命だと言わんばかりに気にも留めない様子を繕いながら、今もなお録画中であるビデオ・カメラへと落ち着いた足取りで向かいました。彼はビデオ・カメラから8mmテープを取り出すと、それをまた背中へ投げてよこしました。テープは廃墟の床に落ちて音を立てました。そうです、少年は紳士だったのです。「あんたを撮るつもりじゃなかったんだよ。自らの拳が壁を打ち砕く瞬間をカメラに収めてチヤホヤされたかっただけなんだ。――テープはそれだけだから、捨ててくれ、悪かったよ」
まさか深夜の廃墟で用を足している人がいるなんて夢にも思わなかったんだ。少年はその言葉を飲み込んで、足早に廃墟を立ち去りました。裸同然でしたが、家に着くまで誰にも会いませんでした。


リサが状況を把握するまでに掛かった時間はそれほど長くありませんでした。彼女は立ち去った少年が童貞で紳士的であと拳で壁を打ち砕くミラクル・ボーイであると認識しました。少年の残したジーンズとテープを手に取ったとき、彼女は自分の胸に芽生えた感情が果たして愛と呼べるものなのか考え、議論しましたがそれはフワフワして掴みようがなく、廃墟の闇の中へ消えていってしまったようなので諦めて帰ることにしました。少年が下着を付けずに穿いていたジーンズを身に付けるのは正直キモかったので、それを手に持ったまま、裸同然で帰りましたが、家に着くまで誰にも会いませんでした。




あらすじ
リサはその後少年のことを考えてマスターベーションした映像を少年のビデオ・テープに記録して返そうと考えます。「中身は消しといたから見ないでそのまま録画してね」
しかしクラスメイトのエリザにビデオ・テープを盗まれ総合学習の時間に視聴覚室で皆の前で再生されたテープをリサは取り返しエリザを殴り付けてエリザはリサの行動に驚き先生はなにもしりません。
リサはあちこちの廃墟を探し回りますが少年は見つからずついに橋の下で寝てるその人を見つけました。「こんにちはテープ返すよあとセックスしよう」
少年は拒否します。ふと橋の上を見るとあやしい男がいます少年は男を例の拳で殴り男は回転しながら橋の下に落ちました。
少年はすっきりしてゆっくりリサのところに戻りましたがリサは微妙に生きていた例のあやしい男によって犯されていました。少年は例の拳で男を殴り男は粉々にくだけ、
それからリサを例の拳で殴りリサは粉々に砕けました。