アリスが空を見上げたときにはもうさっきまで丸テーブルの向かい側で紅茶を飲んでいたはずの鉛筆立てもまるで唯の鉛筆立てになってしまったかのように動くことを止めてじっと椅子にもたれていた。
わんわんわんと遠くから聞こえる犬の声に耳を向けながらこの鉛筆立てをどうするべきかアリスは考えた。
このままここに置いていくというのは何か良心が居た堪れない。かといって得体の知れない鉛筆立てに手を触れるほど大胆な性格ではなかった。
「ねえ、聞いてるの?私は貴方の為にこうやって悩んでいるんだから、
貴方も鉛筆立てらしくもっときちんと立ったらどうなの?」
「それもそうですね」
鉛筆立てから言葉が飛んでアリスは思わず右手を上げ下げした。
まさか返事をするとは期待していなかったからだ。
「ちょっと、返事をするなら返事をするっていいなさいよ!」
アリスが怒鳴ると、鉛筆立ては驚いて右手を上げ下げした。