「かえるくんかえるくん(かえるくんっていうのは僕の友達。でもカエルじゃないんだ。似てるからそう呼ばれてるだけだよ)」

「なにどうしたの(俺を呼んだのは同じクラスの山田だ。こいついつも馴れ馴れしくてウザイんだよ。そのうち食ってやるぜったい)」

「かえるくん(似てるっていうけど、すごい似てるんだ。もしかしてかえるくんって本当にカエルなんじゃない?ていうぐらい。こんなことをいうとい僕がかえるくんを中傷してるように思われるかもしれないけど本当にそっくりなんだよ)昨日は(昨日っていうのは昨日かえるくんと一緒に7並べをしたことなんだ。事の始まりは僕がトランプを持て余して校庭でうろうろしてたことなんだけど、その日は学校が休みで校庭には僕とかえるくんしかいなかったんだ。僕は間違えてきたわけじゃないんだけどかえるくんは学校があるものだと勘違いしてそれで校庭にいたのさ。僕はオロオロしているかえるくんのとこへおもむろに近寄ってうしろから……)ありがとう」

「え? ・・あ、うん(昨日はありがとうってこいつが言ってるのはたぶん昨日うしろからいきなりあんなことをしてきたことについてだ。ふつうの山田なら謝るべきだけどこいつはふつうじゃないからあやまりもせずありがとうとか言ってやがる。なにがありがたいんだかさっぱりわからない。あれ?もしかしてうしろからあんなことをしてきたことじゃなくてその後のあんなことをしたあれについて感謝してるんだろうか?ま、まさかな)」

「あれについては(あれっていうのはあれのこと)僕もそうだと思ってたんだ。」

「あ、ああ。(そのまさかだよ!!こいつあの後のあんなことしたあれについて言ってやがる。俺があれをあれだって言ったあれについてだぜ!)」

「それにしてもあれってあれ(あれっていうのはあれじゃないほうのあれのこと)だよね」

「それよりさ(ギャワーこいつまだあれの話する気か冗談じゃない話を逸らそう。話題話題)おまえって(おまえっていうのはもちろん山田のことだ。山田っていう名前からして既に俺の興味を削いでるんだけど何より腹が立つのはこいつの前髪だ。信じられないよこいつの前髪は。このあいだベランダで外を眺めてたときがあったのさ。別に理由とか目的があったわけじゃないんだけどなんとなく外を眺めたかったから眺めてたんだ。そしたらUFOが見えたからUFOが見えたぜ!ってさほど驚いた素振りも見せずにCOOLに騒いだ。それでUFOを見るためにベランダに出てきた山田が例に洩れず俺に話しかけるんだよ。あのときのうざさっていったらもう堪らないね。俺はあいつのマユゲを引っこ抜いてやろうかって思ったぜ。しかもその話が段々エスカレートしてきてあいつ前髪が邪魔でUFOが見えないよ!とか言い出すんだ!しかもそれだけじゃない!あいつは自分が髪のことを言ってしまったのに気づいてあからさまにしまった!って顔をしてからお、おっと、なんでもないとか言い出すんだ!俺はもうあいつの前髪を引っこ抜いてやろうかって思ったぜ!あいつは嫌味で言ったわけじゃないんだよ。だがそれがムカつくんだ。あんなあからさまにしまった!って顔をするぐらいならさ、嫌味を言ってくれた方がマシだよ。それがしかも一度や二度じゃなくて三度あったんだ!いいか、俺がUFOを見つけてUFOが見えたぜって言ってから三度も前髪が邪魔でUFOが見えないよ!おっと、なんでもない。畜生!なんなんだよあの前髪は!)、おまえってなんか臭うな(な、なにをいってるんだ俺は!話題を逸らすってどんな話題の逸らし方だ。まあいいか。)」

「え?(昨日食べたカレーのことかな。僕は週に5日カレーを食べるんだ。なぜっていつも作りすぎて次の日もカレーになるだろ?だから2日連続カレーは確定なんだけど2分の1の確立で3日連続カレーになるんだ。おまけに週に2回はカレーを作るからそれで週に5日カレーってわけさ)カレー臭い?」

「え? いや、別にカレー臭くはないよ(というのも俺はまさかこんな返事が返ってくるとは思いもしてなかったんだ。なんでカレーなんだよ。カレー臭い?カレー臭いといえば化学の井上。いつも白衣にカレーの臭いつけてるんだよな。意味がわからないよ。カレーの臭いさえしなければいい先生なんだけどそういえばよく命を助けてもらったよ。俺がまだおたまじゃくしだったころの話だ。俺は若かったからよく無茶をして無茶をすることに生きがいを見出していたんだ。それが自分の使命だと思ってたんだよ。あるとき俺はいつものように無茶をしようと屋上に出ていたんだ。いい考えが浮かばないときは屋上に出るのが一番だった。今は天才だからそんなことしなくてもいい考えが浮かぶんだけどな。まあそれで、何を思ったのか雲を食べようってことになったわけだ。わたあめに似てるだろ。我ながら馬鹿なことをしたと思うよ。今でもときどき思い出しては恥ずかしくて身体をクネクネさせてしまうほどだ。どうやったかって、とりあえず飛んで雲のところまで行ったんだけどそれからが大変だった。わりばしを持ってくるの忘れてたんだよ。屋上まで戻ってわりばし借りてこようと思ったんだけど高すぎて降り方がわからないんだ。飛ぶのと同じ要領で行けば降りれるはずだったんだけど、その飛び方もよくわかんないまま飛んできたって感じだから覚えてなかった。もう本当に困ったよ。風もあるし少しずつ流されていくだろ。もうだめだって思ってくよくよしてたときに、先生が走ってきてくれたんだ。嬉しかったよ。学校じゃ俺の無茶に構ってくれる人なんてもうほとんどいなかったんだ。だから俺が何をやっても無関心で例えば溝に足がひっかかったときも自分一人でなんとか出てた。それがさ、井上先生が助けに来てくれたときに、ああ自分を見てくれてる人がいたんだなって感じてすごく嬉しかったんだ。多分ね。それから先生と一緒に屋上まで降りて、なんでカレー臭いのか聞いてみたんだけど結局答え教えてくれなかったな。交通事故で死んじゃったんだ化学の井上)カレー臭いっていうか納豆臭い(こうやって思ってもないことを言うのは俺が伝えたいことをありのまま伝えられない不器用な人だから。決してイジメなんかじゃないんだぜ)」