りんごをたくさん食べればりんごの精になれると信じて疑わない僕の兄が夢や希望を見てる間に僕は汚い夜空を見ていた。鳥か何かが空を横切って僕をもっと落ち込ませてくれないか期待したんだけど黒いゴミ袋がふらふら漂ってるのを見たきりなにもない空で背中が痛くなったから窓を閉めてカーテンを閉めた。僕を落ち込ませるのはりんごの木を見つけるたびにこれはりんごの木だけれど本当のりんごの木じゃないんだよいつか本当のりんごの木を見つけるんだウオオって言うクソ兄貴とか道路に敷き詰められたアルミ缶は絶対歩き難いし歩き難くてアルミ缶を呪い殺してやるって顔してるのにやっぱりアルミ缶の上を歩く人とか紙風船なのにぜんぜん紙風船じゃないどうみてもやわらかい合金みたいなやつで出来てるあれがそこらじゅうにあるせいで、見たくなくてもいつも目に付くこと。そういうのを思い出していらいらして足踏みするのが日課で蓄積されたストレスが体のどっかそういうのを溜めるところに溜まってストレスでビームが出せるようになるまで続けるつもりなんだ。そのビームで兄貴を殺してりんごの木を全部焼き払ってアルミ缶を吹き飛ばして地球を救ったらまた足踏みしたりケーキを食べたりするのが僕の夢です。ってアホか。体のどっかそういうのを溜めるところってどこだよ。胃かよ。大丈夫だ僕は変な期待なんかしないし、しなくたって生きていける。ビームがでるなんて信じないし街中に生えてるあのりんごの木がりんごの木だって言うならりんごの木なんだろう。足踏みで溜まったストレスは胃潰瘍になる前にお空へ投げて捨てる。世界中のストレスを僕が貰って投げて捨てる。ついでに死んだみんなが持って行った分も投げて捨ててみんな生き返ってストレスがいっぱい張り付いた天井は重みで壊れて本当の空の下に僕たちは自由になってりんごを見つけて兄貴も幸せみんなハッピー。さすがにそれは無理だからせめて膨れ上がったストレスが兄貴の身体を肥大化させて巨大なりんごになってしまうのを食い止めよう。そうすればそのうち黄金のりんごが見つかって黄金のりんごを食べた僕は空高く舞い上がり富士山の上をわたあめとか食いながら漂ってるであろうりっちゃんを引っ張って家まで連れて帰るんだ。ってアホか。

なんか泣きそうになったんだけど僕が泣くのを楽しんでて悲しみに拍車をかける努力をしているように感じられたからそれを止めたら泣かなくて済んだ。だけど落ち込んだ心は落ち込んだままスプーンで拾い上げられるのを待ってて待ちながら僕が眠るのを軽薄だと言って止めさせようとする結局眠れなくて朝になった鳥がチュンチュンチュンチュン朝日がビワー新聞配達のバイクがブゥウウウン、カシャ。クソ兄貴が「りんご!りんご!」