「兄者をどこへ連れて行く気でございますか」兄者は行きも絶え絶えに引きずられているよ。

「そちのしらないところぞ」私の知らないところは沢山ある。生まれてこの方家から出たことがない。「具体的に述べよ」「ひきこもりのひめには言ってもわからぬ」「説明できないのかお前の脳みそはしろ味噌かそれともくろ味噌か」「どちらかといえばくろ味噌じゃ」「なら説明しなはれ兄者をどこへ連れて行く」「あそこじゃ。あそこを右に曲がって交差点を右に曲がってその横のコンビニを右に曲がって3つ目で右に曲がったあそこの右じゃ」

「あそこあそこと卑猥な。おやいない、どこぞ、どこぞ」「言うてたまるかあほう」

あそこにいた。「おおい兄者は帰ってくるんかいな」「帰ってこんわ」ばあじゃ。「あんたにゃきいとらんわひっこんどけ」「そないなこというてももうおきゃくさんかえりなはったし」「さっきあそこにおったし言ったら聞こえる、おおい」「ほなわしがくってしもうたは」「なにあほなこというとるさかいとっととしごとせんかい」「わかったアル」ガンダーラーガンダーラ朝食のベルなも。「今日の朝食はなにかしら」「はい。兄者のソテーでございます」「アニジャ?アニジャは食えるのか」「食えるが血や肉の味がするぞ」

「アニジャだなんて聞いたこともないわおいしいのかしらぱくぱくごっくん」

私は気付いてしまったのだ。

「まさかああああ兄者」

「なんで気付かんのや」

「カタ仮名表記は見慣れないものでまったく気付かなかったわ」

「かたがなもクソもあるかい小説じゃあるまいし」

私の瞳は涙に濡れ私の声は怒りに震えガンダーラーガンダーラ

「兄者が死んでしまったそしてソテーになって私の血や肉となるのだきっと」

ああこんなことがゆるされるかうんゆるされる

輪廻断絶憎悪消滅「あんたがゆるしなはってもわてがゆるしまへんがな」

うしろを取られた。


「油断した」「みりゃわかるわアホあんたあにき殺されてなんもないんかいな」

「悲しみは何も生まない憎しみは何も生まない真珠貝は真珠を産む死んだ兄者の悲しみを私は知っている兄者を口に入れた私の怒りを私は忘れない十分だ。憎まれるものは不幸な目に合い幸福な目に合いいずれ死んで土に返るだろうしかし憎しみは憎しみを持つものの体に残りしんぞうを黒く染めのうみそを脱色し死んだ後も土に返らず新芽を生やす、憎しみは人に移り人に移り世界はそのうち黒いしんぞうと白いのうみそで満ちる、薄毛が遺伝して世界がそのうち薄毛で満たされるように、十分だ」

「ほな5秒ぐらいまってやるわ」「なんでや」「十分やろ。十分の5%は5秒や」「あほ、十分の5%は20や。20秒待ち」「あんた計算はやいなー。しんじられんまじで」いまじゃ。

逃げる。


「逃げおったひきこもりのひめがにげられるもんかいな。あんたのことはわしが一番知ってるし」「アホ言うな一番詳しいのは兄者じゃしりの穴の数までしっとるわ」「なんやてどきどきいったいどんなってどんなもくそもあるかいあんたのしりの穴の数なんぞだれでもしっとるわ」いまじゃ。

逃げる。


「また逃げおったおのれあばずれが」「誰があばずれじゃばばあ」「あんたまだいたんか逃げるならいさぎよく逃げな」「足腰が弱いんじゃおぶれおぶれ」「てぇかかる女じゃよいしょ」「あっちじゃ」あそこをゆびさした。「あっちか」


ばあは私を追いかける。追えども追えどもつかまらない。ばあの上に乗ってるからなも。



(まさかの夢オチ)頭がぼーっとして重くて熱くて動かない。涙を堪えすぎたせいだ。太陽が言った「おはようsun」うんおはよう。でもおねがいちょっと黙ってて。食パンを食べるまで待ってて。もぐもぐむしゃむしゃ。太陽がコーヒーを入れてくれた。ありがとう。コーヒーを何杯飲んでも眠気が収まらない。