家のドアを開けると黒い男が座っていた。

男は自分を死神だという。

「死神が何のようですか。ここにかまぼこはありませんよ。

練り物は嫌いなんです。」

「練り物が嫌い?Sit!貴方は死ぬんです。」

「はて、どうして僕が死ななくちゃあならないんでしょう!」

「貴方は死ななければならないのです。それを今から証明して見せましょう。」

「ハッハッハ!おかしなことを・・。いいですか、僕が死ななきゃいけない理由なんてあるはずがない。全ての人間はね、自分で自分の行動を決める権利があるんだ。

例え法で裁かれようとも僕の生死を決めることなんてできない。

僕はお断りしますよ。それでおしまいです。死んだとしても。

貴方が僕を殺すというのなら、話は別です。でも、僕に生きる権利がないと?

無理ですよ。そんなわけない。僕自身でさえ、僕を完全に殺すことは出来ないんだ。それなのにどうして、貴方に僕が生きることを否定できるんです?

証明?ハッハッハッ!やれるものならやってみてくださいよ。

あ、丁度良い。ここホワイトボードがあります。これを使って証明してみてくださいよ。僕が死ななきゃいけない理由ってやつをね!」



「それならやってみせましょう。」

死神は落ち着き払った様子でホワイトボードの前に立った。

「これが貴方です。」

死神は板に描いた小さな丸を差して言った。

「納得できません。」

「は?」

「どうしてそれが僕なんですか。僕はそんな丸くないし、第一・・」

「例えです。例え。」

「例え?何が何をたとえているんですか?」

「描きなおせばいいんでしょう。ほら。」

「ちょっとまってくださいよ。なんですかそれ」

「みればわかるでしょう。人です」

「そんなムカデみたいな人がいますか。」

「いるでしょう。います。いや、今はそんなことどうでもいいんだ。」

「100歩譲りましょう。それが僕ですね。」

「いきなり100歩も譲らないでください。びっくりするじゃないですか。」

「何歩ならいいんです」

「何歩とかそういう問題じゃないんです」

「何メートルですか」

「2メートルならぎりぎり許せます。」

「それじゃあ2メートル譲ります。」

「はい。」



「それで、その丸がどうしたんですか。」

「ところで貴方、さっき自分に死ななければならない理由はないっていいましたよね」

「覚えていませんが多分言ったでしょう。」

「もし貴方に生きなければならない理由がないなら、死んでも別にいいってことになる。」

「別にいいって事は無いでしょう。どっちにせよ僕が死ぬことのメリットが何一つありませんし」

「石鹸3つでどうですか。」

「石鹸じゃねえ・・」

「それじゃあシャンプーにリンスまで付けます。」

「うーん・・。」

「それじゃあレアカードを差し上げましょう」

「レアカード?何のレアカードです?」

「それは言えませんね。」

「ちょっと、いいじゃないですか。」

「ともかくレアカードです。」

「子供じゃないんですから、もともとそんなものに興味はないですよ」

「・・・」

「・・・」

「・・・」

「・・なにレアですか?」

「は?」

「ちなみに」

「シークレットです」

「と言うのは教えないという意味ではなくて」

「教えないという意味でないほうの意味です。」

「シークレットレアなんですね。」

「そういうことになりますね。」

「・・・」

「コンディショナーもつけてください。」

「つけましょう。」

「交渉成立ですね。」



「石鹸3つ、シャンプー、リンス、コンディショナーと引き換えに

貴方に生きなければならない理由がなくなったら死んでくれることになったわけですが、」

「レアカードもです。」

「石鹸3つ、シャンプー、リンス、コンディショナー、レアカードと引き換えです。

ところで貴方生きなければならない理由なんてあるんですか?」

「失礼な!僕だって真っ当な人間です。」

「因みにお名前は」

「男A」

「・・」

「・・」

「は?失礼ですがもう一度」

「男A。男Aです。」

「音怖ェさんですか?」

「違います。男Aです。」

「すいません。ここに書いてもらえますか?」

男A、ホワイトボードに名前を書く。

「男Aです。」

「男Aですね。」

「・・・なにか問題が?」

「もう決まりじゃないですか。・・・死んで下さい。」

「どうしてですか!男Aにだって生きる権利はあるはずだ!」

「男Aですよ!所詮ちょっとセリフの多い脇役です!」

「所詮ちょっとセリフの多い脇役で何がいけないんですか!

言っておきますがね、僕がいなければこの劇は成立しないんだ!

脇役だからってなめてもらっちゃ困る。」

「用がなくなったら人々の記憶からも忘れ去られるんですよ。それが今でもいいじゃないですか。」

「いいえ困りますね。自分に与えられた役目を全うするのが僕の使命です。

セリフが有る限り気を抜くわけにはいかないんです。」

「役目?・・失礼ですが役目と言うのは」

「え?」

「セリフとか・・」

「・・・・」

「・・・」

「・・あれ、台本どこいったかな・・?」

「死んで下さい」

「いえ、ちょ、」

「死んで下さい。貴方に生きならければならない理由なんて初めからなかったんだ!」

「ありますよ!僕にだって家族がいます。」

「家族ですか・・・。」

「ええ。僕が死んだらみんな悲しむでしょうね・・」

「ちょっと呼んでみましょう。」

死神、おかしな動きをする。どこからか男Aの両親と姉が登場。

「あ、とうさん」

「おとうさんですか?」

「はい。まあ一応」

「一応?」

「とうさん!僕が死んだら悲しむよね!」

「え?まあ一応」

「かあさん!かあさんは!?」

「そんなことよりヨン様見なかった?」

「姉さん!」

「そんなことよりポチが帰ってこないんだけど」

死神、またおかしな動きをして三人を帰す。

「さあ僕がどれだけ大切にされているかわかりましたか?」

「よくわかりました。死んで下さい」